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詩人:夕凪
「ドン!」と鳴り目覚めた次の瞬間、私の体は上下左右に揺らされ
よく分からない思考回路でパニックになったのを覚えている‥
一度目の揺れの後、這いながら部屋の外へ出ようとしたが
ドアは歪んで開かず、私は叫んでいた‥
すぐにやってきた二度目の揺れに、入り口の前で小さくうずくまり恐怖に震えているしか出来なかった‥
揺れが治まると、体当たりでドアを壊し
抜け落ちた階段を、飛び降りる様にして家の外へ出た
異様な匂いと見た事のない景色‥それは地獄だと思った‥
夜明けがいつだったのか分からない空は、東から西から次々上がる炎で赤く見えた‥
父は生き埋めになった人の救助にあたり、母と私達子供は、駐車場の車の中に避難していたが
薄着に素足のまま飛び出した体は、寒さで痛く凍えそうだった‥
父達が救い出せたのはほんの数名で、多くの人が圧死や焼死で命を落とした‥
私達の住む地域は被害が大きく、救援物資もすぐには届かず‥
ヘリコプターに向かって「テレビに映す暇がなるなら、そこから食べ物を落とせ!」と叫んだりした
生き残るための日々の始まり‥
死を哀しむ余裕などなく、ただただ必死だった‥
地震から二週間程経ち、私は地震後初めてお風呂に入れたが
髪も体も汚れすぎていた為泡立たず、すごく惨めな思いがした
それでも人間らしい感覚が甦ってきて、入浴という当たり前の行為に幸せを感じて感謝した
自衛隊などいらないとよく言われるが、あの時の私達には、どんな偉い政治家よりもはるかに頼もしく
懸命に現地で動いてくれたその姿は、神様の様にさえ思えた
彼らは戦争の為にいるのではなく、全てにおいて国民を「守る」為に存在してるのだと感じた。
三ヶ月が経ち、ようやく電気・ガス・水道全てが復旧した
この頃から私達は、本当の意味で前を向き始めた様な気がする
人間らしい生活を取り戻しながら、失った町を甦らせる決意を皆で話し合い
どんな時も助け合った‥
半年が過ぎ一年が過ぎ‥
17年という時間はあっという間だった‥
そうしてこの町は、新しい長田の町に生まれ変わった─‥。