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[154153] 涙のゆくえ

詩人:どるとる


今日、流した涙が明日へと迷わずに流れてゆくのを見送りながら夢のドアの隙間からのぞく
一粒さえ残らず無意味になんかならないから
ぼくは流れ落ちる涙にさよならは言わない
明日も会えるから

悲しい出来事にさんざん打ちのめされて
切なくて切なくて夜は眠れず過ぎる

のど元過ぎれば熱さも忘れちゃって笑い話にだってできるさ
そんな簡単な話ならよかった
だけれどあまりに抱える悲しみは大きすぎて

膨らみすぎた切なさはぼくの中でやがて破裂したようにつかの間は静かにしているけどまた目覚めればその切なさはぼくを苦しませる

足元にゆれるぼくの影が指し示す指先の向こう
今にもこぼれちまいそうな涙が光る

小雨をよけて 雨宿りする子犬みたいな気持ちで 言葉をしまう
ささやかな 抵抗だ

言葉にできる悲しみなどあるものか
言葉にもできないから 苦しいのさ
影も形もないくせに
一丁前に 被害を拡げる悲しみ

今日も涙は流れる
どんなに隠しても
ほら 隠せない
涙が 心から
はみ出している

どこへ向かい流れてゆくのか
それさえわからないままでもうぼくはいくつでも流していた
これからも流れるだろう

涙のゆくえをよそに
ぼくはただ悲しんで
明かりのない路地裏のような 暗い部屋の隅っこに逃げ込んで
黄昏るわけじゃないが なんだかひとりよがりになってしまう

小さく つぶやくさよならの声が 風に流され かき消される
涙は流れる ゆくえなんか興味もない
どこへなりとも消え失せるがいい
それがしかるべきさだめならば

ぼくはただ悲しみに一生懸命に悲しんで
涙のゆくえなんか気になりもしないから

その背中を わずかな気配をたどるだけで
妙な名残惜しさ感じるけど いなくなってせいせいもするから
不思議だな

今も知らない
どこから来てどこへ帰るのか
ただ、今日も隙を伺いぼくを濡らす。

2010/03/13 (Sat)
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