詩人:♪羽音♪
優しい悪魔に
心を売った日
あれから人生は
バラ色に満ちていた
こんな私には
勿体なさ過ぎるほど
甘い夢だった
なのに…
この胸の痛みは何?
この息苦しさは何?
自分の力ではアナタを
拒めそうにないから
何度も悪態をついてみた
でも本当は知っているの
そんなことをしなくても
アナタはきっと
私を忘れてるって
アナタは沢山の
女性を惹きつける
そんな魅力のある悪魔
今更、アナタが私の元へ
戻ってきてくれるなんて
初めから有り得ないこと
そんなものは
お伽話だって
アナタは薔薇のような人
美しく儚く
官能的で誘惑的で
その薔薇を一目見ただけで
吐息が漏れてしまう
自分でも
どうしたらいいのか
分からなかった
ただただアナタに
こんな姿を知られたくなくて
たくさん強がった
でも美しい薔薇には
棘がある
それは私の心に
深く深く突き刺さり
毒々しい赤が
滴り落ちていった
それを見透かした悪魔は
ニンマリ笑いながら
貪り尽くしていった
私は泣きたいのに
涙は枯れ果て
心は痛みすらも
感じなくなった
その瞳には何も
映すことはなく
その耳には悪魔の
高らかな笑い声しか
聞こえなかった
あの日から私は
悪魔の玩具になった
私はただただ黙って
側に寄りそうお人形
「私は心が無いから、ずっと一緒に居られるね。やっとずっと一緒居られる」
平坦な声でそう告げたら
アナタは満足げに
微笑んで
私の黒髪を撫でた
人形は忘れかけていた
仄かな幸せを噛みしめた
あれから悪魔は
新たなお人形を
手に入れた
それはそれは愛らしく
笑顔が素敵なお人形
私は使い古したお人形
心を売った瞳には
光も感情もなく
クスリともしない
ただただその瞳に
二人の幸せそうな姿が
映っただけだった