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詩人:どるとる
影は右に左に揺れ
光はまたたき人が自力で歩く世界で
まばたきのほんの
一瞬にも流れる涙
ほほを伝う 小さな河川
どうでもいいけどたいせつなことなんだ
いつも人のすぐそばにあるのにな 見向きもされず道端で小石みたいに寝転がる
涙を流すのは 悲しいからかい?
それとも うれしすぎるからかな?
いくつもの 夢の
いくつもの 未来の
その数だけ 傷ついてきた人よりずっと
面倒くさがりのぼくに語る資格はないのだろうけど
ぼくだって生きてるんだぜ
それなりに悲しいんだぜ
悲しくない人なんていないんだぜ
どうでもいいけどたいせつなことだとか
街には腐るほどあふれているのにね人はいつも気づかず素通り
気づかないことさえ
言い訳して あざ笑う
悲しいな 悲しいな
悲しすぎるなあ
雨雲がたちこめ
窓に ポタリ
やがて空から
言い難い悲しみが降る
幸せの形さえ忘れてしまいそうさ
幸せなんて言葉 死語になりつつあるこの世界で
思い出さえ 消え入りそうな街の片隅
濡れた 子犬の 汚れない瞳の向こうの世界
どうでもいいけどたいせつなことのたいせつさを知らず知らずのうち踏み潰してるぼくらは誰もが加害者だ
被害者に回るな
お前の席は被告人席
花が揺れ 笑顔咲く
表向きとても幸せそうな世界でも
悲しみは確かにある
ただそれを誰も言葉にしないだけ
ほらまたどこかで誰かのほほに涙 伝う
ぼくは何もできず
それを傍で感じながらも 雑誌を見るように 遠く 眺める
どうでもいいけどたいせつなこと
それは誰かが見逃してはいけない
誰かがきっと気づいてあげなきゃいけないこと
他人だってただ眺めるだけのぼくも悪人だ
傍観者は涙を流す
見れば見るほど惨めなイメージ
ぼくの言いたいこと
わかるかい?
言葉の向こうの君よ
それはいつもどうでもいいこと。