詩人:甘味亭 真朱麻呂
僕の心には黒い兎が棲み着いていて
君の心には白い兎が棲み着いている
僕の兎も最初は白かったけれど
どんどんと大人になっていく内に黒く染まっていた
あいつはニヤリと笑っておまえが悪いんだよって
話をするたび言いやがる
心当たりはきっとありすぎるほどある
僕はいつだって目立ちたがり屋で出しゃばりだから
いろんな人たちを今まで押しのけて踏みつけてきた
そのための嘘ならいくらだってついたし
傷つく誰かが悲鳴を上げても容赦なく痛めつけていた
そしたら兎はいつの間にか黒くなって
性格も刺々しくなっていた
兎は僕の心だったんだ
僕の心の兎が黒いのは
闇をあまりにも背負いすぎたから
悪ふざけばかりしすぎたがら
君の心の兎が白いのは
汚れを知らない光の中を歩いてきたから
傷つくことなんて少しも知らないから
だから君と僕は結ばれないのさ
一緒にいちゃいけないんだ
黒は黒と
白は白と
それがいちばん相応しく自然な定位置だ
愛が芽生えたって
きっと君を黒くしてしまうから
そんなことは絶対にしたくないから
もう誰一人傷つかせたくはないから
だから僕は白い心を持った君からある朝だまって姿を消した
もう君が追ってこれないくらい
遠い遠い場所へ
飛び跳ねながら
僕は泣きながら
できるだけ遠くへ遠くへ姿を消した
黒い足跡と白い涙を残して。