詩人:緋文字
一本の木だけが
垣根の前に立つ
あの場所を
知らせておこう
或る人が持っていた
その中の一つ
断りをいれておこう
許してもらえるよう
貴方が触れること
赦してくれるだろう
感興催すほどではないから
見落とさないよう
伝えた通りに
そうその意気を以て
きちんと歩いて
其処まで 来て
見えてきたら
近付く前の一呼吸
想い出して
一切のものから断つ様に
纏ったものも少しの間
脱ぎ捨てて みて
生まれた月にまた生まれ
分かち合えたりした時から
移り変わりゆく時は
恵みの雨にもなって
雨ざらし 惨めとは
繋がらなくなって
いつまでも
凍みたままの気分 思い上がりの
靴下を履いた少女も消えた
次に落とす予定のもので
成らせた実
あまり沢山の実はつけれないから
一つ限りにしておいて
渡すあてがある、
其の人も言っていた
親指の爪 届く前から
包むその香りは
よく眠れる と
貴方が言った 私の匂い
現れた果肉は
目眩がした と
おどけてくれた 私の姿
口に含んだら
あの時の様に
味わい 尽くして
毎年必ず 実をつけるけど
そう沢山は実らないから
毎年 ひとつ
食べに 来て