詩人:どるとる
急ぐひつようはどこにもないから
ゆっくりのんびりの帰り道
終電に間に合ったら
そこからは マイペース
ガラガラの電車内に小さく響く おなじみのアナウンス
お降りの際はお忘れ物のないように…
ドアが開いたら
もたれ掛かっていた
腰を上げ
すっかり 誰もいなくなったホームにひとり 降り立った
そこはまるで月面みたいな 不思議な空間
帰り道にひとり唄う
鼻歌と時々ぼくの隣を走り去る 車の音だけが 聞こえる
そんな帰り道
特別なものなんて何もなく ただありふれた風景だけがあくびが出ちゃうほどそこに当たりまえにある
帰り道ただひとり
前にも後ろにも
人影はなく
まるで 異次元みたい
空を見上げれば
月が あるくらいで
なんだか 急に 切なくなって ため息が出ちまった
柄にもなく
泣けちまった
そんな夜の片隅で
説明するまでもなく ぼくは 迷いのない足どりで ボロアパートのいやに長い錆びた階段を のぼるのさ
ここが最後の山場。