詩人:千波 一也
過度な
やさしさを
憩わせましょう
つかの間のわき見に
我を返しましょう
欠けても月は元にもどる
満ちても潮は引いてゆく
もっとも深い
日向へ赴きましょう
広げただけの
あなたの両腕に
名前をつけてあげましょう
浅瀬を渡れば傷ばかり
空を仰げば
降られるばかり
やわらかな
慕われやすい布ならば
知らぬほつれも
生じましょう
一度も
己を包まぬままに
しずかに裂けてしまうでしょう
重い扉はそこかしこ
気ままな風も
そこかしこ
いっそ
さびしいままで
くぐり抜けましょう
わびしいままで
もどかしいままで
軽く
すべてに会釈をしましょう