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[174863] 梔子乃花

詩人:善田 真琴


見え乍ら敢へて見ざる様に自ら目を閉ざし歩き続くれば、いづれは転ぶらむ。転ぶ危ふさ知りつつ、それに賭くるは博打さながら、手持ちの金子少なく切羽詰まれば、余裕失ひて巻き上げらるるは必定。目的のため過程を顧みざれば、例え手中に収めれども自ら満足するを得ず、臍をかむは火を見るより明らかなり。

然りとて、放置すれば、滝壺に落つる小舟、乗れる当人は目瞑りて寧ろ楽しげなれば、座視するほど縁は浅からじと言へど、血分けたる同胞にてもあらず、当人の本意ならざる事を無理無体に強いる権限もなし。妬み嫉みと人の謗りは恐るるに足らざれど、万一全て御破算にて終はりし後、「故にあの時、止めたりけるを」としたり顔するも醜し。ましてや背中押す気も起こらず。然ても「虞や、虞や。汝を如何せむ」と嘆きし諸葛亮の如き心境なりきとて。


床の間の

虚ろなりせば

慰みに

活けし梔子

はや褪せにけむ







【歌意】
床の間に何も飾りがなく寂しいので、くちなしの花を活けた。その口無しではないが、何も語らぬまま、その色は既に褪せてしまったのだろうか。

【脚注】
「梔子」と「口無し」は掛詞

2012/03/11 (Sun)
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