詩人:桜井 楓
キャッチコピーで飾られた街のなかで
右も左も見渡せば見知らぬ人ばかりで
誰も寂しがりの人はいないように見えるけど
本当は誰かと同調したい心はいつも
孤独と自分と
手にしたスマホの画面に依存している
昨夜見た同じようなニュースのなかで
ある人が語っていた言葉が気になりだして
あれもいまの時代と言えばそう思えるけれど
本望を置いては行けない心もいつか
明日の自分と
向き合うことができる日が来るのだろうか…
嗚呼 オトナになったのに大人への抵抗
あの頃に素直に眺めていた街はどこへ
いまは 愛着もない風景へ贈る言葉は
嗚呼 故郷を離れ ただ ここで暮らす人たち
独りの夜には慣れない
誰にも見つからずにこの家へ入る度に
無機質な感情にはなれない
こんなにも輝く街のどこかに
明日を忘れるほどの夜はあるのか
つい道に迷ってしまうと
適当に歩いてしまう
そのうち分かるところへ向かえるはずだからと
ちゃんとした道を歩んでいた頃の自分に
いまは標は見えていないけれど
道の途中でそこに辿り着ければいい
ありのままを出すことに勇気が必要になってしまった時代では
誰と誰が何を話すべきかなんて
他の人が決めるものでもない
自由という間違った常識を叩き込まれ
袋叩きにする為にお互いに顔の見えない場所から
なりふり構わず攻撃しているのは
紛れもなく弱い人間だって
晒すようなものだと気付いていない
「泣けない時代」を生きるいま
弱者を武器に強き者を叩くようにと
それが自由だというのは
葉から落ちていく雨の雫を見ても
何も感じないことと似ている
植物も毎日生きている
強い陽射しを受けて枝垂れていても
宵が来て鮮度の良い空気を吸う明朝を迎えれば
また立ち上がる
海も山も空も何も話してはくれないけれど
じっと眺めていれば
じっと眺め続けていれば
この胸のなかにあるものに答えをくれる…