詩人:千波 一也
かよわい肌の持ち主は
男のほう
繊細に消されていった
煙草の匂いは
指にも
首にも
移り住む
男を選んで
移り住む
男は
確かに直線的だ
けれどもそこに
強度はない
女の
したたかな
曲線のなかでだけ
つかの間の英雄を味わう
有限の直線だ
本能は
女が受け継ぐ習わしで
男は
その足元に
飼い馴らされる
そして
有る筈もない才能を
健気に磨く
信じる力を
一心に
磨く
かよわい言葉の源は
男にあって
視線は
鋭くならざるを得ない
守るべきかと問われたら
信じることに
命をかけて
美しいものたちに
憧れるよりほかにない
男は
真っ直ぐ前を見る
抱えきれない多くのものを
背中に肩に
感じながら
開け放たれた
前を見る
自由気ままな
女の視界の
片隅で