詩人:甘味亭 真朱麻呂
ただ延々に意味もなく言葉を連ねていく
その言葉自体に意味がなくても
連ねていく内に自然と言葉はそれぞれの形を持っていく
だがその文字の集まりは見る者によっても変化し見え方も異なる
一枚の無地で真っ白な紙にただひたすらなにも考えずに書いてみる
初めはただの紙立ったものがだんだんと文字を自らの手で生み出していく内に文字自体も踊っているように書く者の意思にこたえる
知らない内に私は書いている文字に意味を持たせようとしていることに気づく
そうすることによって更に書いていく文字は輝きを増す
まるでそこでやっと色の付いた絵画のように
鮮やかな色彩をその紙と世界の全体に際立たせていく
時にはあまりに当たり前すぎて見る者にあきれられてしまうものもあれば
偶然にも意思と意思がぶつかって互いの中で共鳴するようなそんな時もある
それはとても不思議なことで見る側と書く側の気持ちは全く違うはずなのにある時ある瞬間に重なって分かり合える偶然の一致を生む
それは天文学的な確率で時には何気なく
私の心にそっと遠慮がちにたずねてくる
まるで永遠の中に落ちていくわずかな一滴の雫のように
私の心も誰かの心さえふるわせる
一瞬の音は聞こえるか聞こえないくらいの音をして
その人にしか書くことのできないその人らしい音調をいくつもいくつもこの世界に響かせる
それは時に小さかったり
大きかったり様々で
小さくても大きくてもそれは自分の心の中でも生き
日を追い歳を重ねていく内に言葉は厚みを帯びてくる
より洗練された言葉へ
より卓越された世界へ
形を変えながら言葉も世界も進化していく
たとえ小さき雫だとしてもその場でしか生まれない貴重な雫で
大きければいいというわけでもない