詩人:千波 一也
ぼくのよりきみのが多いなぁ
っていう争いは
とても大切
その争いが
大人になっても続くなら困るけど
争いのためのはんぶんこだと
困るけど
▽
はんぶんこって いやだなぁ
だって
ぼくのが減るんだもん
でも
あのこがいないのは
もっといやだなぁ
▽
やわらかいホットケーキを
はんぶんこ
少しだけかたい
ビスケットもはんぶんこ
でもね
ママをはんぶんこには
出来ないんだよ
パパもだめ
いいかい
出来ないことのあることを
やさしさ、と呼ぶんだよ
ぼくたちには
出来ないことのほうが
ずっとずっと多いんだ
▽
正確に
はんぶんこ、する道具は必要ですか
寸分のたがいも許すまいとする熱は
凍傷をもたらす
災いです
冷たい道具の言いなりになんて
なりたくないです
あ、
もうちょっとナイフを右に走らせて
そう、そう、って
なんの話をしてましたっけ
▽
ぼくのより きみのが多いなぁ
っていう争いは
とても大切
少なくもらう身はもちろん
多くもらってしまう身のせつなさも
順繰り順繰り
わかっていけるから
▽
ねぇ、
きみの目の 右はなにを見ているの
左のほうでは
なにを見ているの
はんぶんこずつ
おんなじものを見ているのかな
それとも
まったくちがうものかな
▽
この
足のしたの
ずーっとしたの国ではさ
まだ寝てるひとがいるんだって
ぼくらは起きているのにね
おかしいね
でも、
夜にはぼくらも
笑われてるかもしれないね
くすぐったい、ね
▽
ぼくのより きみのが多いなぁ
っていう争いは
とても大切
つぎは上手に分かれるようにって
どんどんへたくそになれるから
上手に
上手に
ほほえみかたを
覚えてゆけるから
▽
とつぜんですが問題です
目の前に
鍵と 神さまと フルーツとがあります
どれをだれと分けたら
良いでしょう
絵筆と
くじらと
キャンドルと
どうすれば
はんぶんこに出来るでしょう