詩人:アイカ
『お前にだけ特別に
教えたるわ。
俺の前生、
イルカなんやぜ?誰にも言うなぁ〜?』
そう言って
あの人は、
子供みたいに
気良気良笑ってた。
それは
夏の暑い日
世界の全てが
眩しく見えて
あの人は『普通』
があまり分からない
私に、初めてを
沢山くれて
あの人は
ギターなんかが
好きで
甘い甘い
チョコなんかが
大好きで、
なぜか
塩辛い海なんかが
好きで、
波乗りなんかも
好きだった。
冬の寒い日
海なんかに出かけて、
あの人は二度と……………
帰って
来なかった。
冷たい海で足つった
間抜けな
仲間を助けにね
きっといつもの様に
“前生イルカやし!!ヨユーやて!”
なんて笑いながらね
海から
あがって来たのは
間抜けな仲間
ヨカッタね一人だけ
助かって………
ヨカッタ……
ヨカッタ……
イルカだったんじゃねぇのかよ……
馬鹿野郎!
ざけんな!
待ってたのに…
なんで手がこんなに
冷たいん…?
ねぇ。ねぇ…。
白い指がカチカチで
いつまでも冷たくて
それが嫌で
眠ってるあの人を
起こそうとした。
何度も、何度も
揺すって辞めない
私を
仲間は後ろから
抱き締めた
サワラナイデ。
マダ奴ガ寝テル。
置イテクノ?
嫌ダ…嫌ダ…
ハナシテ…………
はなせ!!!
いやだ!!!!
ちょうどその時
私も沈んだ。
一緒に過ごした
夏の日々と共に。
それは冷たい海の底
前生はイルカ
間抜けなイルカ