詩人:アル
《大切な本》
主任
今日、誕生日ですよね?
ん、うん。
誰に聞いた?
名前知らないんです。
立ち話のひと…
は?
立ち話のひと?
設計の…。
主任のお友だちだと
思うんですけど…。
主任と同じくらい
背の高い人。
善田だな、それ。
そう言えば、
ユキちゃんが善田と
話してるトコ前に
見かけたコトある。
でも、ユキちゃん、
相手の名前も知らずに
お喋りしてたのか?
あたし、そう言う人
結構多いんです。
自分にとって
本当に必要な人なら
名前は自然に耳に
入ってくるって、
今みたいに…。
あたし、
用がなくても
本屋さんでボーッと
本を眺めるのが
好きなんですけど、
自分に必要な本は
向こうの方から
「わたしを手に
取ってみて?」って
語りかけてくる、
そんな感じがするんです
手にして読んでみたら
それが大好きな本に
なったりすることが
多いんです。
俺は必要な本かな、
ユキちゃんにとって?
はい…。
だけど、まだ
大切な本ではない?
……。
ユキちゃん、
誕生日のプレゼント
貰える?
…いいですよ?
何にしますか?
ユキちゃんを
ホットで。