詩人:遥 カズナ
道端で 私はどうやら私自身らしい後ろ姿をした人物の背中を十数歩程離れた距離から眺めていた
どうやらと言うのは 後ろ姿ではあっても何せ自分であるし
確かめに歩み寄ろうとしてみても全く同じ歩幅 スピード 方角へ息を合わせたように遠退き 立ち止まりその距離感は微動だに変わらず しかも
そんな何かを感じ取ったかのように 前にいるその私がこちらを振り返ってみようとしてみても その振り返る背後でこの私の位置はその視野の反対方向である彼の死角へとねじ曲がり まるで お互いを隔てた空間が ちょうどストローの蛇腹みたに屈曲して
どうあっても前にいる私であろう人物はその後頭部を私の方へ向ける他に無く
もう背後の気配の正体を確かめる事なんて諦めてしまったようで 今更ながら私は その自身の後ろ姿を まじましと眺めている他になかった
らちがあかず 自然と嘆息とともに足下に目をやると雨が残していったであろう水溜まりに 鏡うつしに逆さま映る筈の自分が 丁度二階の窓から見下ろしたように 水溜まりの底の方で足下を覗きこむようにして立っている姿が見えた…
家へ戻り
それらの事を机に向かい書きまとめようとすると
たもとに置いたコヒーカップの水面に私のメガネが文章を映していたので そのままコレを書き写し
こうして楽々と生きたままここへ 私は閉じ込められている