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[86497] 赤と 黒

詩人:緋文字

好いな、と
呟いてみせた
大河を渡る水牛の画一枚

あれから

奇しくも此処で
ふと目に留めた
黄なびた壁と同化して
黄土の河
より
渡りきれぬものにされた
黒い頭

爛々とした眼は
ブラウン管を通して合わせた時より
思いがけず強く
諭してくる様であっても
もがいているようには
見えない


拒んでよじる身も
気付けば同じ流れ
ただ 先に続く


色が 色が
薄れていく
代わりに
黒く変わる準備を始める



渡されたものは
人の物と思えぬほどに
黒かった

そんな色で あっては、と

それらすべて
押しもどし
詰め物にしてしまおうか

鯉のように動く口
ただ交互に見ながら
そんな事を考える

芳情に与った
そんな口ぶりでの
ありがとう
言われて 戸惑い
また 悔しくある有様


疑いながら
極当然のように想像していた
時がきたら、と

借り物で流せたのは
借り物の心


底から出る
ものが聞きたい

理不尽でも不道徳でも
大切にしておく価値などないような
酷いものでいい

一声 ひと鳴き


受け継ぐ準備を始めた

2006/09/27 (Wed)
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