詩人:甘味亭 真朱麻呂
「この先工事中」の看板
舗装された砂利道
よけて進めば見える懐かしい母校へと続く坂
静かな路地に白く木漏れ日が注いで
あの中へ行けば私が求めていた別の世界へ行けるような気がした
でもその白い光の中を突っ切っていっても
同じ見慣れた景色が広がるだけ
セーターの綻びを直すみたいに
世界にある綻びも直せたらいいのに
いつまで経っても世界は綻んだまま
綻ぶように壊れていくように
綻びはむしばむように広がっていくだけ
迷う足はまるでパンクした自転車のように前へ進もうとはせず
擦り切れたタイヤのような心はいつしか
綻ぶように私の記憶もろとも火で炙ったように
灰になって消えた
それはあの「この先工事中」の看板を通り過ぎた辺りから
私の真っ白な心をいとも容易く狂わせた
ガタガタと崩れる具合に
私の良心はやがて影をそっと宿すだろう
まるでそう綻ぶように
私のすべてを狂わせむしばみ続ける
もう書き換えられない過去を背負い込みながら
私は冷たい地べたをうつむきながら這いずるだろう
綻ぶように
綻ぶように
綻ぶように……
私は私自身の持つ闇におそれながらも
魅入られてしまう
高ぶる感情の矛先を誰に向けるのでもなく
ただ気のおもむくままに
私は狂ったように綻びを広げていく
彷徨するように
綻んでいく
綻んでいく
綻んでいく……。