詩人:甘味亭 真朱麻呂
茶色く錆びきった線路
規則正しく停止線で止まる二両ばかりの電車
乱すものはなにもない
色あせた今日というページがめくれてまた新しい
なにも書かれていない真っ白な今日を書き込んでいく
思い出になるように
少しでも楽しいものになるように
たとえ最期の日になるとしても
いつも通りに過ごすだろう
どれだけの『大丈夫』という言葉や
たくさんのやさしさや気遣いの言葉をもらっても
なにもしてあげられなかった
何ひとつありがとうの言葉さえ当たり前すぎて
わざとらしくて気がつくとなにかをきりもなく求めている自分が鏡に映り
とてもとてもいやな姿だった
眠れない日は続き
ねていても途中で目が覚める日があり
とくにあの夏は寝苦しかった
熱を帯びた鉄のように
蒸し暑い陽射しがうざったかった
でも、過去の後ろ姿とは逆の道を歩いていく勇気
ちょっとずつだけど
ちょっとずつではあるけれど
持ち始めている気がする
そうして今日もけっきょく真っ黒になるくらい書いたページをめくり
明日のためにゆっくりとゆっくりとでも確実にページをめくる。