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[161605] 猫と盲目

詩人:いもけんぴ佐藤ロビンソン

1日の始まりに、今日は何をして、なんのために頑張ろうかって考えてみた。そしたらなんだか死にたくなった。わたしには守るべきものが何もないってことを思い出したから。

ベッドから這い出して、顔を洗って 歯磨きをして、わたしは死に場所を探した。途中でおなかがすいてパンを食べた。家の中に死に場所は見当たらなかった。

飼い猫は家の中で一番暖かい場所を知ってるんだ、自分が死ぬのに相応しい場所もきっと知っているんだろうな
わたしが死ぬのに相応しい場所は一体どこだろう
わたしは死に場所を探して旅に出た

人に迷惑をかけるような死に方は嫌。
死ぬなら誰にも気づかれないで 美しい自分のままで死にたいの、なんて
醜い自分の姿が写った曇りガラス越しに呟いたりしつつ

あたしは気づいたらあなたの家の前にいた
正確にはあなたが前に住んでいた家だから あなたはもう死んでしまって いないのだけど でもわたしはここまで来て他にすることがなかったからあなたの家のドアをノックした

そしたら予想通り いつもと変わらない無愛想なあなた
ドアを開けて私を見るなり優しい笑顔で
待ってたよ なんて「バカみたい。」
そうつぶやいたわたしは 差し伸べられたあなたの腕にすがって泣くしかなかったんだ

だって これ 夢でしょう
あなたは死んでしまったんだもの こんなに幸せな夢を見させるなんて、神さまなんて大ッキライ
なのにあなた 君は美しいね。なんてふざけて言う
じゃあわたしここで死ぬわって
わたしはあなたの口であたしの口をふさいで呼吸をやめた
こんなに幸せな死ってあるかしら

目が覚めたらあたし あなたの腕の中で泣いていた
悪い夢でも見たの? あなたが死ぬ夢を見たの 死ぬ、ってどんな感じかな あたしは幸せだった それじゃ、ふたりで死に場所を探す旅に出ないか?
僕たちが死ぬのに相応しい場所を
何年かかってもさ。




2010/10/25 (Mon)
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