詩人:もとり
ごめん
ぽつりとそう呟いた後は
もう言葉にならなかった
大丈夫
ぽつりとそう呟いた後は
掠れて言葉にならなかった
何も言わなくてもお互い
その言葉の続きは分かるから
沈黙の会話
湿った風を肌で感じながら
対して寒くもないのに
両腕で体を抱きしめ震わせる
あぁ 終わってしまうんだな
一つの恋が呆気なく終わる
客観的に見てる僕にはまだ
実感がないのかもしれない
どう帰ったかも憶えていないけれど
玄関をしめた瞬間
涙が溢れたのは憶えてる
思い出すのは
どれも綺麗な思い出ばかりで
初めて交わした言葉だったり
君の照れた目で見る上目遣いだったり
その時その時の気持ちだったり
本気で好きだった分
本気でつらい
これから始めようと思ったことも
この先にみていた未来も
すべて白紙に塗り替えて
これからどうやって生きていこうか
大袈裟だと思える様なことを
本気で考えて
去り際は美しく
思い出は儚く
それでもこれはありふれた
極普通の一つの恋の終わりなんだ