詩人:望月 ゆき
3歳のぼく
父にねだって 枝をポキリと折る
そこに罪悪感などなく
ただ キレイというだけで
5歳のぼく
花びらをむしっては
おままごと
おもちゃの茶碗にてんこもり
「さあ めしあがれ」
10歳のぼく
舞い散る花びらをよけて
自転車で並木道を走り抜ける
花の美しさには 目もくれず
16歳のぼく
いっちょまえに恋なんてして
はじめてつないだ手のひらには
花びらが
ひらりと舞い込む隙間もない
25歳のぼく
いくつもの恋を経て
時にはひとりの春もあった
それでも毎年花は咲く
ぼくの無関心をよそに
30歳のぼく
つぼみが開くのを待って
並木道を歩きにでかける
きみの手との間に
もうひとつの小さい手をはさんで
歩幅せまく歩いていく
これからのぼく
来年も そのまた来年も
桜の花がきっと咲くように
来年も そのまた来年も
しあわせの花がきっと咲き続けていくことを
切に願う