詩人:千波 一也
碧い鉱石を
もう、ずっとながいこと
求めつづけて
彼は
自分が
空に渡っていった
海であることを
憶えていない
※
夕日の熱は
裏切りという罪を燃やすのに
都合がいいから
だまってみてる
誰もみな
紅く凝り固まって
※
圧倒的な氷は
つややかな黒色らしい
そういえば
夜空の星は
黒鍵を弾けばこその
美であったかもしれない
※
とうめいな国に
等級という制度が築かれてから
ことばは難しくなった
それゆえ罰にさえ
透明度がある
※
橙色がつらなると
なつかしさは熟して香る
窓辺に憩う
いのちの浅瀬の豊穣が
つがいのはじまり
羽もつすべての
※
灰は
おそろしくない
何の前触れもなく
灰と呼ばれる日が来るとしたら
それは真実おそろしい
※
往くものと
還るものとが交わって
紫になる
紫は、高貴で禁忌な色であるから
薬になれる
毒にもなれる
※
しろい影になりたくて
なれなくて
しあわせな言葉がひかりに、向かう
お迎えは
こころと裏腹なのだと
※
緑の大地は
なにいろの血を流すのか
知りたければ
おまえの小指を
ナイフでなぞればいい
深い海の底で生きるのが
おまえでなければ
※
金脈を
めざした
夢にも満たない時間の
ひとつぶたち、は
もう
まぶしくて顔がみえない
だけど、かならず
笑んでいる