詩人:どるとる
僕の季節はまるで追いかけても追いつけないくらい
とても早く 早く過ぎてゆく
気づくといつも後ろを振り返ってはあっというまだったなんてお決まりの言葉つぶやくんだ
まるでどうでもいいことさえ
記憶に残せたならそれは思い出だろう
忘れてゆく記憶とはべつにくだらないことだけど
たとえばねこうしてね普通にね 笑っている時間だとか 忘れないでいれたら幸せ
自転車で景色を 駆け抜けるように
周りを見渡す余裕なんて まるで ないものだから
覚えているのは印象深い出来事の一部だけ
そして僕は運命という時計の上を跳ねたり回ったりしながら
その時計が壊れて動かなくなるまで
茶番のような人生を本気で生きるのだ
いい呼び名がないなら時の旅人とでもまあ呼んでくれ
ぼそぼそと食べこぼすように
僕は言葉を 誰にともなく囁く
ああ 目の前をふたたび過ぎる季節が
次の季節を連れてもう 待機している
ほら 桜もやがて葉桜になり枯れるだろう
時間の問題さ
いつも どんなことでも
そしてやがて 僕を司る時も止まるだろう
『まだ若い』そんなこといつまで言ってられるかな
僕をつなぎ止めてる
この世界の引力は
やがて 僕を見放し
はるか 空へと帰すのだろう…
僕の季節はまるであるようなないような
曖昧な影だけを心に刻みつけ 足早に去る
それが運命ならば
過ぎ去る景色のひとつひとつを たまには足を止め 季節をじっくり眺めてみよう
立ち止まってみても
時間は変わらず流れる
でも目を閉じてみればほらまるで時間が止まったように穏やかだ
ああ 親にもらった名前などでは僕の全ては伝わらない
だから ひたすらに時を旅する 旅人と呼んでほしい
閉ざされた季節の向こうに 寒々しい冬があり
そのまた向こうの扉の向こうには暑い夏がある
幾重にも連なる時を旅してきた
僕はまさに旅人だ。