詩人:千波 一也
わたしの辿った
春を数えていただけの、
それだけで、よかったはずの
とおい春
わたしには
あとどれくらいの春がめぐるのだろう、と
なにげなく指を折り、数え始めた
そう隔たらない春
わたしの命には限りがあるから
春の残りにも限りがあるけれど
在庫を残したまま、ぷつりときえる
そんな運命がわたしを飲み込むかも知れない
在庫など、
あっても無くても同じことだろうか
そんなことは考えずに生きたほうが
幸せだろうか
前を向いて、未来を切り開いて、とか
過去は捨てずに、しっかり抱いて、とか
わかる、けれど、どれも確かにそうだけれど
少しずつ、はぐれてしまっている気がして
何がおきてもいいように
こころを決めて臨む春
でも、この至らなさを立ち直らせる
やさしい階段のような春もほしい
だれか知っているのだろうか
在庫の確かめようを、
あるいは確かめなくても
こころやすらかに暮らせるすべを