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詩人:感動マニア。
長く 激しい戦いを終えて
歴戦の勇者が力尽きる時
その目は 何を見るだろう
愛する者たちを 故郷に残し
己の心が信ずるままに 倒れる時
その眼には 何が映るのだろう
剣は折れて 矢は尽きた
仰ぎ見れば 何もなく澄み切った空
全てを出し尽くし 力の限りに戦い抜いた
最期にそう言える者だけが
限りなく青く輝くあの空を
去りゆくものを迎え入れるかのように
限りなく蒼く輝くあの空を
見上げていることが できるのだろうか
戦に焼かれ 血が流された街角
母を呼んで泣き叫ぶ幼子は
何を見るだろう
血を流し 横たわった女は
最期に 何を見たのだろう
守るべき我が子か 命奪う凶刃か
泣き叫ぶ幼子は何を知るだろう
横たわる母の亡骸が 立ち上がらぬことも
子を守ろうとして倒れた母の愛も
自らの生命があと幾許かも
どれだけ知っているだろうか
さあ この瞬間に空を描こう
哀しき街の隅に 響く泣き声
あの空は 一体どんな色で包むだろうか
空が 空が優しい涙を流すと
誰が 誰が言い切れるだろうか
世界は回る 私たちの知らない場所では
私たちが見たことのない景色がひろがる
晴れの日も 雨の日も 今日も
どこかで生命は生まれ どこかで散っていく
哀しい詞(うた)だと思わないでほしい
これがこの世界の
私たちが在る世界の
有りようであって
ただそれ以上でも
それ以下でも
ないのだから