詩人:遥 カズナ
月夜の海のなみま
とおく
いくども、いくども
海上へジャンプする
イルカのすがたを
窓際へよりそいながら
眺めていた
着水するたびに
波しぶきは
あたりへと濡れかかり
景色に充満してゆく碧さに
過ぎさりつつある雲達ですら
その足どりを鈍らせているようで
悲しいとも 楽しいとも
とれる そのなきごえは
呼吸をゆるされた瞬間
海原を背に、響きわたり
暗黒の深海と大気との狭間を突き破って
わたしの意識のみなもすらも往来しながら
なにを こらすまもなく
海底へと消えうせていった
それは
生きる理由を
むげにさげすむとか
嘆くとかとは無縁に
命をわがままに満喫したいがゆえの、健やかさに溢れ
しだいに部屋にまで 充満してゆく碧さに
イルカとつれだったわたしにとって
呼吸をする必要すらついに
なくしてしまっていた
、