詩人:緋文字
コップひとつ
そのままにしない
きみにしては
山と積んだ
うちの一冊
手に取ってみても
その胸の奥底
読み取れやしないよ
放りなげたら 開かれた頁
拾いあげたら 飛び込んだ言葉
姿を探した
いつもの場所で 読む人は
なんて 可愛い声で
呼んでくれて
いたのだろう
今だから
思うけれど
振り返れば、
耽る素振り
寄せつけない
空気かもして
気難しそうに
わが身を
抱いた
数秒 待てば
おとずれた
シンメトリーに配置させた
この装飾達のような調和
望み通りの
何事もなくなった
ひっそりした空間を
後から
覗きこむ
歪んだ位置から
何度ここで
指を止めた
どんな顔して
口にした
思い出すのは
声色ばかりで
色への応えも 定着した頃
最後に見たのは
その 少し手前
すくんだ肩と
チグハグな顔
奇妙に映った
今、気づくけれど
風そよぎ 擦る音
いつもの場所で 読む人の
残留物だけが
腕をひろげて
ここへ来て、と 呼んだ