詩人:どるとる
立ち止まったその時
夕日がゆっくり沈んで
遠ざかる今日はもう永遠に帰らないことを知る
今日会った人や明日会うはずの人
その中で確かに失うもの色あせるもの
ぬぐいきれない涙
記憶にしみのように
いくらもみ消そうとかき消そうとしても
しみは濃くなるばかりで消える気配はない
夜にのみこまれて
すっかり胃におさまった街は「さよなら」という言葉が悲しいほど似合うのさ
揺れる 街の灯
かすむ 意識
途切れる 記憶
スライドみたいに瞬間で朝にすり替わる景色
まぶしさに目を細めゆっくりあけてみればそこには昨日となんら変わらない景色がある
今日は消えてない
ただ今日を新しい明日の今日と呼ぶだけで今日は今日でしかないのさ
ほら、はじまりは死ぬまで何度でもこの心におとずれる
夜が来るように
この瞳の中を何度でも行ったり来たりするちょっとしたスライドショー
それだけの物語
今日もこの世界では
さよならのない物語が誰かが死んだあとでも続いている
それぞれがそれぞれに様々な自分を演じながら
本気のショーは
何よりも何よりも
真面目に続く。