詩人:どるとる
生爪はがすような痛い思いもたくさんしてきたはずなのに
今の僕 どうしてこんなに責められてるんだろう 立場は危うい
常識という名前の壁に囲まれて
悲しみという名前の雨に降られて
都合のいい言い訳かもしれないけど愛という名目で僕は癒されたつもりさ いつも
電車が走り去るのを眺めるように
時の波がおだやかになるまで 荒々しい場面を 見て見ぬふりでやり過ごす
そんな日々に
そんな僕に
何を願えるだろう
何ひとつ 救いはない
だけれど わかってほしいことはいつも心の中にあるのさ
戯れに奏でるピアノのようになんの意味もないけれど 僕は涙で ちゃんと返事をしているのさ
ああ 悲しい場面は目をつむってるうちに終わったよ
もう目を開けても大丈夫だよ
誰かの声が聞こえた
こわくても悲しくてもそんな場面を目をそらさずに見る人
僕みたいに逃げちゃう人 たくさんの人がいる中で僕はいつまでも悲しみに背を向けたまま
何を 言いたいのか
何が したいのか
自分でも時おり わからなくなってしまう
こんがらがる 思考
立ち止まる影をただうつむきながら 眺めているだけで汗もかかず頑張った誰かの隣ですずしい顔もできる
いたずらに時を流してしまえばそこにはただなにもない平地が続くだけ
太陽と月が交わる
朝と夜が入れ代わる
そんな毎日がなんの変化もなく続くだけ
ふるえる指で鍵盤に手を添えて 何を弾こうというんだろう
悲しみのうたかな
雨に濡れながら
雷にうたれながら
ただ僕はうたう
名前のないうた
だからさ わかってほしいことがいつも心の中にあるのさ
弾けもしないピアノ弾くようになんの意味もないけれど 僕は涙で 思いを語るんだ
悲しくて悲しくて
何も言えないでいるけど 押し黙るもどかしさは僕がいちばんわかってるんだ
だから僕は誰もが弾けるピアノがうまく弾けない。