詩人:soRa
君が楽しそうにキッチンに立って
鼻歌なんか歌っているから
僕は心の準備を始めた
何だか舌を噛みそうな名前の
フランス料理を作るのだそうだ
僕はその迫り来る恐怖をまぎらすために
君の鼻歌に合わせてピアノなんて弾いてみた
時々君が首を傾げたりするものだから
僕の心も僕の弾くピアノも
いつしかマイナー調の旋律を奏でていた
とうとう並べられてしまったそれらは
見た目こそ綺麗だったけど不思議な香りがしていて
それを君がフランスの香りねって言ってのけたのには
驚いたけど精一杯の笑顔を作り覚悟を決めた
一通り説明を聞いたがよく分からなかったので
薬屋さんまでの道のりを思い浮かべながら
思い切って口に運んだ
・・・最悪だった
君の感想もきっと同じだったのだろう
二人の会話は途切れたし
決して目を合わそうとはしなかったから
それでも
同じ気持ちで居れたことに奇妙な喜びを感じながら
静かな夜は過ぎていった