詩人:地獄椅子
ポエムに溢れた実験的プロット。
そこに散見できるカテゴライズレスの冒険精神。
精巧な緻密さと荒削りな未完成さの絶妙なるケミストリー。
旺盛な制作意欲の泉を枯らすことなく。
天国が二つに割れて、俗人と聖人に分裂した自我。
フラストレーションの地雷源の犠牲になりながら、微視的なパラダイムを華麗に展開。
アイスバーンの上を滑走する霊柩車には、廃人が収容され、かつて性交に及んだマグロの女を思い出している。
こんな時、空は非情である。
大層な思想を研鑚し、普遍の定理へと達したかに思われたのだが、安穏とした空は、人々のわだつみを高見の見物しているようで、腹立たしくなった。
かの貧困の地では、哲学よりも行動が重要とされる。
豊かさの中の後ろめたさ、罪悪感。先人の築いた礎の上であぐらをかく怠け者。
私に埋没した挙げ句、公が蔑ろ。
あの自由の女神すら、虚像の象徴。
理由もなく存在を覆い尽くす虚無感が、意味を探すならば、生命それ自体があやふやで曖昧模糊とした地盤の上に揺れる、一本のリラの樹ではないか。
その土壌は黒ずんで、豊潤さを養育するのに適さない。
悪魔の囁きが自暴自棄な感情を植え付ける。“今が楽しければそれでいい”と享楽的な誘惑は欲望を増幅させる短絡的な視点でしかなく、実る果実はない。
巨大な歯車が遺伝子に組み込まれ、無意識に操作されてゆく。
その輪廻は定めか、はたまた変更可能な予定なのか。誰が知る。
E=mc2ですら、解明できない謎が、今日的な問題にのしかかる。
万能なテクノロジーの幻想が打ち砕かれた時、人々は遅蒔きにして帰還るだろう。愛の時代へ。
アトムは太陽に突撃した。正義の為に。
俺は地球の片隅で殺伐した空気を吸って、苦悩に仰向けになり、横たわる悲しみに魂のカタルシスを願う。
刹那の怖さに打ち拉がれながら、ちっぽけな命を、からっぽな涙を、この叙情に還元して―それのみを意味として、人一人愛するために、多数の人を傷付ける。その償いはまだ取り戻せるだろうか。
心のどこかで積年の無情を。
ジェノサイドの原罪を民族の歴史に。
人間の原型が抽象的神話の誕生を物語り。
ミレニアムの夜に次世代の架け橋を。
アノミー症候群がパースぺクティブに。
アクティブとナチュラルの融合が音韻の先に。
この行間の吐息に。