詩人:トケルネコ
見上げた夕焼けに 蝿の大群
どこまでも うねりながら伸びてゆく
空の窪みへと まるで黒く気高い魂のように
俺は静かに喉を震わせている
ひどく悲しい歌が花を枯らせる
痛みを確認するために また壁を打ち抜く
すべてを焼き尽したいと願い
すべてを努めて腐らして
声すら喪った
きっと俺に一対の半透明な羽があったら
あの小さな骨を贖いの杯に砕き
渦を巻く顔の無い亡者たちにくれてやるのに
黒い雨が赤い錆をおとす
流れる暝い水が すべての色を溶かしゆく
輝く夕陽の奥の憎しみも 青白い月のような網膜も
褪めゆく空に沈む 懐かしい顔も何もかも……
すべてを焼き尽くしたいと願い
すべてを努めて腐らして
影すら喪った