詩人:min
降ります、のブザーを押し忘れて
バス停をふたつ見送った
硬貨2枚で
海の匂いがするね、と言えるくらいのことは許される
むずかる幼子のような
まあるい昼下がり
ロータリーから地下街へ降りたら
家族連ればかりで気が滅入った
命を孕んでみたい、
そうすればなにもかも
上手くいくような気がする
硝子張りのアーケードが
湾曲してゆくのを
子どもたちだけがじっと見つめていた
そのやわらかな骨組みは
海鳥にも似て
海洋博物館は錆びた骨を剥き出しにして
鴎の子らを怯えさせる
自らの航法を思い出せないのだ
その腹に宿したものが
私には見えない
命を孕んでみたい、
そうすれば飛ぶくらいのことは許される
そんな気がする