詩人:明希
白い光が眩しくて、目を覚ました。
それはカーテンの隙間から、そこから覗ける空もまた白かった。
頭痛に見舞われて、手を当てた額から、長すぎる前髪をかきあげて横目に見た姿。
隣に佇む君を一目見て、僕は微笑む。
ただ、それだけの感情でしかないけれど、それ以外を特に必要と思う事もない。
抱える程の裕福より、たった1つ、僕が僕達である為に、かけがえのない何かを、
この手の中で確かに感じてる。
そう、1つあればいい。
他の何かを犠牲にして、取り憑かれても、血を吐いても、僕達には何かは残らない。
その中で
崩れるように流れていく糸をたぐり寄せながら、
天に昇りたいと願いながら、
闇の中で見た光を、点を見据える。
傍らの君は静かだった。
静かに目を覚ました。
僕は喉元にかけた指先に力を込めていく。
何も映さない眼は、僕を捉えてはいないのだろう
でも認識はできていた
その眼を見つめながら、首を絞めた。
辛くとも、涙が出ないから
無抵抗の中、君は苦痛に歪む傍らで微笑ってみせた。
日に陰が差す。
闇の中の白、白の空間に佇む黒。
真っ黒な闇を纏い、歩く僕の頬を
乾いた心を濡らすのは涙ではなくて―――儚い雪だ。
空間はやっぱり白い。
力を失って愕然とする僕を、今度は君が眺めていた。
表情は微笑っていた。
君もまた、かけがえのない存在なんだ
頬に差し出された手に、
僕はようやく涙を流していた事に気付く。