詩人:鰐句 蘭丸
君は平成元年の春に生まれた
血統のよい利口な母をもち
四兄妹の末っ子として
生まれて間もない まだ胎盤をかぶったままの君を
今も瞼の裏に思い出すこともできる
利口な君の母は
胎盤を丁寧になめて取ってくれていたよ
まだ便を上手にできない君を
僕も君の母と手伝ってお尻をさすってあげたっけ
四兄妹
長男はホルスタイン模様の「ウシ」
次男は茶色系の毛並みの「チャイロ」
三男はクリクリ巻き毛のフワフワ毛並みの「クマ」
末っ子の君だけが女の子で真っ黒の垂れ耳 甘えん坊の「クロ」
兄たちは次から次に知らない人にもらわれて
「クロ」君だけが君の母とこの家に残ったね
いつか 君の母も永遠の眠りにつき
僕の母もこの世を去り
僕は君を支えてきたつもりで
君はしっかり僕を支えてくれていたよ
時には
僕のイライラのはけ口になって
君を怯えさせてしまっていたけど
次の日の朝は
ちゃんと僕の顔を見て声をかけてくれたね
退屈な時間の合間にお散歩に行き
追いかけっこ
かくれんぼ
楽しかったな
僕に新しい家族が出来て
息子のわがままにも耐えてくれたね
三輪車で体当たりされても
お昼寝時に砂まみれにされても
必要の無いメガネをかけさせられても
じぃ〜っとして相手してくれてたね
ありがとう
最近は僕や息子よりも走るスピードが遅くて
時々 倒れ込んでは
心配したんだよ
でも 気付いてた
もうすぐ お別れが近いんだなって
考えたくなかったけど
覚悟はしてたよ
今日はごめんね
君を見送ることできなくて
仕事が遅くなって
急いで帰ってきたんだよ
真っ直ぐ君のところにきたんだよ
君は硬くなって
動いてはくれなかった
声かけてくれなかった
ごめんね遅くなって
ごめんね
わが愛しのクロさん
十九年もの間
僕のそばにいてくれて ありがとう
そして
おやすみぃ
クロ