詩人:甘味亭 真朱麻呂
ただ一つの嘘さえ
水に流してくれない
君は憎しみの目で
僕を睨みつけるだけ
許されないってことぐらいわかってる
ついちゃいけないってことは知ってた
だけどその嘘で君があんなに怒るなんて…
繰り返す過ちは
まるで
行ったり来たり
『この電車は回送電車です。間違っても乗らないように』
機械的な声でさ
まるで
一定の音程で
僕に言ってるように繰り返す。白い息が空気に混ざり
どこか消える
ただ一つの嘘さえ
バレずにつけない僕
君は口をきかずに
僕を睨んでるだけさ
ただ一つの嘘さえ
水に流してくれない
君は憎しみの目で
僕を睨みつけるだけ
暗いホーム
朝なのか夜なのか
貧者達は寒さをしのぐ為の寝床を探す
駅の踊り場
ここなら最適だよ
ごみ箱をあさって今夜の夜食をみっけな
ただ一つの夢さえ
僕には叶えられない
君は相変わらずに
僕を毛嫌いするだけ
ただ一つの嘘さえ
水に流してくれない
君は憎しみの目で
僕を睨みつけるだけ
回送電車に乗り
もう戻ってこれなくてもいい
もしくは
脱線事故に遭い
もう死んだ方が何倍もマシさ
ただ一つの嘘が
君をも狂わし
幸せを失わせる
ただ一つの嘘で
人生も台無し
未来を濁らせる
…………回送電車…回送電車
走り出す前に
ドアが
閉まるその前に
乗らなくちゃ…乗らなくちゃ。