詩人:アル
両親が離婚したあと
母親は家を出て
父親は亡くなった
そんな孫娘に
おばあちゃんが
千円札の小遣いを
あげようとしたら
「10円のほうがいい」と
その子は言った
おばあちゃんが
「なんで?」と尋ねても
俯いたまま黙っている
ぼくは
その子が
電話ボックスにいる所を
何度か見かけたことがある
おばあちゃんに内緒で
家を出た母親に
電話をかけていたんだと
思う
たった8才の子が
自分を可愛がってくれる
おばあちゃんに
気を使ったのだろう
「…千円札より
10円玉を欲しがるなんて
本当に変な子だよ、
あの子は……。
あれあれ、どうした?
何で兄さんが
泣いとるの?
あんたも変な人だねぇ」