詩人:望月 ゆき
きみがプリンが好きだと知り
ボールと泡だて器を用意した
すると 卵をきらしていることに気づき
悩んだ末に おもてに出た
ぼくは 公園に向かい
砂場にすわりこんだ
誰かが忘れていったプリンの空き容器に
誰かが忘れていったスコップで砂を詰める
ザクッ ザクッ ザクッ
砂場に穴ぼこを掘りながら
砂場のふちに 容器をさかさに伏せて
そっと 上にもちあげた
そのとたん
さらさらと砂がこぼれだし
それはやがて 公園をとびだし
坂の下にある川まで流れていった
砂のプリンにも失敗し
途方に暮れていたそのときに
ぼくが掘った穴ぼこから
おせっかいネズミが顔を出し 教えてくれた
きみはプリンが好きだけれど
ぼくのことは好きではないのだと
ぼくはさらさらと涙した
さらさら さらさら
涙はやがて川にたどりつき
砂と一緒に暮らすのだろう
プリンのことなんて 知らぬ顔で
さらさら さらさら と