詩人:n
君は自動ドアが開く時間さえ待ちきれず
身体を捻りながら建物へと駆け込んだ
建物内の者に名を告げると
その者は少し君を気遣うように
左の方を指差した
君は建物内に足音を響かせながらまた走った
そして一つの扉の前に立ち止まると
大きくひとつ息吸って涙を拭った
僕は君にその扉を開けて欲しくなかった
でも僕の思いとはうらはらに
君はそっと扉を開けた
部屋の中には人が横になっていた
その人の顔には白い布が掛けられていた
君はそっとその白い布を自分の手に取った
そしてその人を揺り起こすように大声で泣き出した
僕は君の右側に降り立ったが
大丈夫だよとは言えず
泣きじゃくる君の前に横たわった
僕の亡骸を少し憎んだ。