|
詩人:メイ
どこかでネジを
なくしてしまったの
そのポッカリと開いた
小さな穴から
少しずつ腐食してゆくわ
輝きに満ちていた
ブリキのボディも
幾度と零れた涙のせいで
すっかり赤茶けて
キシキシと悲鳴を
あげているの
所々でふと蘇る
大切なあなたとの
メモリーは思考回路が
劣化してしまったから
ただチカチカするだけで
今ではもうはっきりと
思い出せないよ
楽しくて幸せだった
あの頃のことも
優しい言葉
あったかい温もり
そのすべてでもう一度
錆び付いたあたしに
潤滑油を注いでよ
あたしにあなた以外を
愛するプログラムなんて
されていないの
電源が切れるまで
故障してしまうまで
なんてあたしは
起動してらんないよ
存在理由を失った
ロボットなんて
いらないのだから
それならいっそのこと
あなたの手で
優しく壊してほしい
もう何もいらないよ
これが最後のお願い
もう何も言わないよ
あなたを困らせないから
スクラップのままで
あなたとの夢を見させて
スクラップのままで
あなたを想い続けさせて