詩人:望月敏彰
逃げてはいけないという
勇気を出すための流行文句
ときとしてその言葉は
諸刃の剣となるもんだ
そうだな 後ろの一本道に
落とし穴があるのなら
逃げたらいけないのかもしれないな
人生という道は
そんなことはありえない
多岐に渡る道が
あらかじめ用意されているんだ
しかも どんどん
増えていって
視野が広がれば それらが
見えるようになってくるんだ
「こんな道もあるよ」「あんな道もあるよ」
そう言ってくれる誰かに
なりたいもんだよな
ひとつのことが不得意なら
どこかひとつの得意なこと
バランスは常に取れていて
環境ひとつで
自信をなくすことはない
人間が皆違うのは
それぞれが出会う確率を
高めるためで
自分にないものを求め
助け合うことができるようにと
組み込まれた本能
異なるものを排除して
しまいがちなのんは
危機回避ではなくて
その人にとってピッタリな
ものに出会うためにあるのかもしれない
それでも助け合えるようにと
いくつかの同じ本能が
組み込まれていて
逃げるのは本能であり
逃げずに我慢するのも本能
「逃げてはいけない」のは
逃げ道がないときで
実際 逃げ道は山ほどあって
その道が見えるかどうかは
誰かが照らす光が必要なのかもしれない