詩人:老女と口紅。
初夏の風かおる川原で
僕一人 水遊び‥
日座しきらめく土手の上から
満面の笑みで僕を見ている
オジサンが一人…
嫌な予感‥
誘拐‥ 保護?
それとも…
母から別れまだ数日
ススキの影で足がすくむ
僕、どこから来たの?
一人なの?
男は必要以上に興奮し
辺りを何度も見回した
お母さん、 声にならない声‥
心で叫ぶ‥
届くはずの無い声で母に祈る…
助けて‥
願い届かず男に手を取られる
そぅ‥
あの日が僕の人生を狂わした
あの出会いさえなければ
私は今頃どこで何をしてたのでしょうね‥
‥今はこの男との生活
自由など、みじんもない
水道の水の音でふと思い出す
遠きに思う故郷の川のせせらぎ…
狭いプラスチックの部屋
あれから三年‥ただ ただ毎日が
たんたんと過ぎてゆくだけ‥
私の明日に夢や希望など持てやしない‥
あの日あの時の満面の笑みと引き替えになった
私の人生‥
いつの日か 故郷に帰れる日を夢見て
今 ここに生きる私
スッポンの一人言…‥