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詩人:高級スプーンあと何年
画面の向こう側で
大勢の人が笑っている
隣できみは泣いている
夜空に青空
とっても綺麗
眺めているだけで心まで
あーあ
だったらどれだけ楽だろう
偉人の辞世の句を諳んじて
気を紛らわせる
明日を考えずに生きていく今日
だからいつ死んでも構わない
とは言えないから死ぬね
ぬねぬねぬね
ぬとねと似てる
めっ
そう母に怒られても
あなたは泣いているだけで
反省の色は空の彼方
そう言えば
きみは空によく似てる
晴れたり曇ったり
「月が綺麗ですね」なんて
リバイバルされた言葉を
口にしたくなる
一緒に泣いたり
途方に暮れたり
離れた場所でひとりで泣いたり
画面の向こう側の誰かにさあ
思いの丈を綴ってみたり
この時間が無駄なんだ
春が来て
雪が溶ければ
足跡も消え
それくらい無駄なんだ
それくらい当たり前のことなんだ
いつしか誰もが去っていく
去りゆく人を覚えていた人たちさえも
当たり前のことばっか言うな少し黙れ
少し
あと少し
もう少し練ってみよう
辞世の句を詠むのは
もう少しあとにしよう
もう少し生きていよう
きみが本当に空になるまでは