|
詩人:高級スプーンあと何年
もしも
ビルから飛び降りる前に
君と出会えていたならば
何かが変わっていただろうか
学校でいじめに遭っていたなら
そこから逃がすことはできたか
もしも
電車に轢かれる前に
君と出会えていたならば
何かを変えられただろうか
会社でいじめに遭っていたなら
そこから逃げ出すことはできたか
目の前にいる人も
地球の裏側にいる人も
自分だって救えやしない
生まれてからこれまでの間に
何か一つでも
変えられたって言えるのか
これがわたしの人生だ
恥の多い半生だって
どれだけ加筆修正しようと
純文学にもなりゃしない
ビルから飛び降りた君も
電車に轢かれた君も
君を殺したアイツらすら殺せないで
今日をのうのうと生きている
でもここで君の後を追って
命を断つのはたぶん違うよな
本当はね
話を聞くくらいならできるから
その前に
自分をどうにかしないとな
目の前にいる君にも
地球の裏側の君にも
合わせる顔がまだないが
たったひとつからでも変えていこう
逃げてもいい
前を向こう
この命を使い果たすまでは
君に合わせる顔がないから
行こう
ごめんなさい
君と出会うのはもう少し先になりそうだ