詩人:あいる
何か足りていなかった
線香花火の憂鬱さ
冬の花火は
ひどく胸を痛める
澄んだ空気に
ヤサシク燃えて溶けて
零れ降りる火種は
ただただ、潔くて
ボクはその一瞬に
恋を
していたのかもしれない
寝るまえに
少しだけ思いだして
想いだす
逃げ出した深夜情緒
駆け抜けて薄い月
一口で飲み干した
グラスに残る
紅い月
カランと音たて鳴いた
ランプシェードの
緩いシルエット
きっとボクは夢をみる
覚えていられず朝に泣く
何か足りていなかった
零れ降りる涙は
やらかい火種
ただただ、潔くて
ボクはあの一瞬に
恋を
していたのかもしれない
涙を拭うたびに
火薬の匂いが鼻につく
また夜に染まる
忍び足で集まる影や闇
君を一層
際立てた
泣きながら火をつける
ボクの物語が
フィクションであることを
望んだ
叶わない恋
君の一生は短すぎる
消える瞬間
手で掴む
小さな火傷
寝るまえに
君のことを思いだして
想いだす
きっとボクは夢をみる
その夢が忘れられなくて
火薬の匂いで
涙腺が緩む
明日にも治る
ノンフィクション
この傷が悔しくて
ボクの一生は長すぎて
投げつけたグラスが
パリンと割れて