詩人:望月 ゆき
自転車に乗って
ここまで 走ってきた
もう どのくらいの間 こいでいるだろう
と、いうよりも
いつから 走り始めたのかさえ
走り出した頃は
まだ ペダルも軽く
少しくらいの向かい風もへっちゃらだった
ときどき 強い風が吹いて
蛇行運転になったりはしたけれど
それでも ぼくは
周りの景色を頼りに走り続けた
よく考えたら もともと
自転車こぐのって得意じゃないんだよね
道がもっと広かったら
絶対に自転車でなんて走らなかった
途中、気の合う人たちと出会って
後ろに乗せてあげたりもしたけど
いつも 気がつくと
ぼくはまた ひとりで走っていた
いなくなる前に もっと
気を配ってやればよかった、と
長くは続かない後悔もしたりして
どのくらい 走ってきたのだろう
ペダルは今や鉛に等しくなっていた
ぼくは ようやく
ようやく ここまで来た
ここが目指していた場所というわけではない
けれど
なぜだか もう急ぐ必要はない気がした
そのくらいまでは 来たのだ と
とにかく
何か 飲み物でも買おう
ぼくは 道の端に自転車をとめた
自販機のルーレットが当たり
ぼくは コーラを2本一気飲みした
げっぷと一緒にぼくの中から
何かが出ていった
ここからは 歩いていこう
コーラの缶を捨てて
ぼくは 今度は自転車にはまたがらず
ゆっくりと 歩き出した
自転車を押しながら
歩き出したんだ