詩人:どるとる
太陽とお月さまみたいに背中合わせの僕らは向き合うこともしないでずっと黙ったまま
散らかりっぱなしのこの部屋の中で
会話もなくただ壁を見つめているのさ
時々大きなため息がこぼれるけどお互いにそんなことさえ記にしないで
いつも素知らぬ顔して うつむいている
さめきった家庭には
さめきった夕飯が並ぶ
年老いた夫婦の形
昔は愛しあっていた二人も今ではもう見つめ合うこともなくて
白髪をかぞえて
ため息をつくくらい
ケンカをするのも疲れるから空からのお迎えがくるまで二人は黙っているつもり
あの頃の情熱はもう見る影もなく
悲しい 悲しい 日々で
心まで 老いたように
ファミリーは今日も背中合わせで暮らす
犬はおばあさんから
餌をもらい
小鳥はおじいさんから餌をもらい
植木鉢は誰も手を出さないから枯れきり
そのうちおばあさんもおじいさんもいなくなって この家は空き家になって
取り壊されて
数少ない二人の思い出は瓦礫の下
そして犬も小鳥も今はゆくえもわからない
おばあさんはおじいさんに何を伝えたかった?
おじいさんはおばあさんに何を伝えたかった?
言葉もなく 旅立ったどちらかを 忍んだ夜は長く続いた
あの満月の夜に
流れた涙はどちらの涙だったのか
それは誰にもわからない
この家にあった愛は本物だったのか
それもわからない
ずっとわからない
記憶は行き場もなく
さまよう 闇の中
ここにあったはずの
愛を探し続けてる。