詩人:アイカ
その歌は
今日スピーカーに
届いたばかりなんだ
心の恋人
ヘドウィグが
優しく歌う
愛の起源を聞きながら
人の始まりを想像するんだ
愛の生まれる前の
それは悲しい物語
プラトンが唱えた
痛々しくも美しい
愛の始まりの物語
昔々の冷たく暗い夜の事
二人は抱き合って
一つに戻ろうとしたんだ……ってね
引き裂かれた
もう一人の自分に
戻ろうとした
ただそれだけの行為…
セックスは恥ずかしい事だって
誰が
決めたんだろう?
ヘドウィグのカケラは彼女の中にあったんだってさ…
じゃあ
私の片割れは?
私のカケラ達は?
私のカケラは
とっくに
バラバラと
飛び散って
消えてしまった様に
思えてしまうんだ
こんな綺麗な歌
こんな素敵な歌
とても私には
歌えないよ
罪を忘れた私は
2度引き裂かれて
とっくに片足
とっくに片目
神様が怒ったんだね
確かに貴方の
言うとおりだったね
消えたカケラの
魂の痛みは
私にまで伝染して
この世にもしも音符が無ければ
きっと身動き一つとれなかったよ
だから
少しだけ
私の意味を教えてくれた
あのギターに
恥じる事ない様に
最後の歌を
唄う事にするよ
たとえ喉から
赤い涙が流れても
最後の歌だけは
ギターに恥じぬ様
あのステージの上
私の最後の……
……愛の歌。