詩人:剛田奇作
究極祭のお知らせ
日時 ×月×日午後1時
場所 △△駅前広場にて
究極なものをお見せ致します。参加費は無料。
是非お越しください。
夏のある朝
こんな奇妙な葉書がポストに届いていた
究極なもの?
確かに
究極祭だけに
その日
私は葉書を持って
究極祭に行ってみた
会場はすでに多くの人々で埋め尽くされて
物凄い湿度と熱気だ
人込みを掻き分け
やっとステージが見える
場所に出た
開始時間を、すでに20分過ぎた
何も始まらない
暑さも手伝って
苛々する
脇でスタッフらしい人が大道具を持って
コソコソ準備している
前のおばちゃんの下げているビニール袋に
小さい虫が
入ろうとしていた
私は黙って払ってやった
おばちゃんは
まだかねぇ…
究極…
と呟いていた
私は一体何を求めて今
ここに立っているのだろう
人々をこの真夏の会場に鮨詰めにしているものとは
一体、何なのだろう
ジットリと首に張り付いた汗を拭う
一時間が過ぎた
前の客がどうやらクレームをつけ始めたらしい
それは瞬く間に会場全体に広がった
究極を出せ!
究極! 究極! 究極!
究極! 究極! 究極!
人々は
罵声を浴びせ続ける
凄まじいエネルギーだ
私は、怒りに荒ぶる人々を押しのけ
会場を去った
缶ジュースを買った
猫がうずくまって
体を舐めている
そっと
つやつやの背中を撫でてやった
猫の神聖な瞳
空き缶のへこむ
ペコ、という音